#1-017 働き方と学び方の変化に合わせて、個室と共用部の役割を見直す――小学生のいる家庭が考えたい、ちょうどいい住まい方

在宅ワークや家庭学習、タブレットを使った宿題などが日常の一部になった今、子どもにとっても大人にとっても、家の中で「集中しやすい場所」と「声をかけやすい場所」をどう使い分けるかが大切になっています。大事なのは、個室があるかどうかだけで考えるのではなく、今の暮らし方に合う役割分担を住まいの中につくること。総務省は、テレワークをICT*1を活用して時間や場所を有効に使う柔軟な働き方と示しており、住まい側でもその変化に合わせた工夫がしやすくなっています。
*1 ICT 情報通信技術(Information and Communication Technology)の略で、インターネットやパソコン、スマートフォンなどを使って情報や知識を伝え、共有する技術のことです。
30秒で要約
個室と共用部は、どちらかを選ぶものではなく、役割を分けて使うのがポイントです。
大人の仕事も、子どもの宿題や家庭学習も、内容によって向く場所は変わります。国土交通省は、住まいは適切な維持管理や更新によって長く快適に使えるとしており、その更新には間取りや使い方の見直しも含まれると説明しています。
今の家に新しく部屋を増やす前に、まずは「どこで何をするか」を整えることから始めるのがおすすめです。
最初に見直したいのは、「部屋数」より「毎日の行動」です
小学生の子どもがいるご家庭では、「子ども部屋が必要かな」「書斎がないと厳しいかも」と感じることがあるかもしれません。けれど、実際に負担になりやすいのは、部屋数そのものよりも、宿題・仕事・食事・片づけが同じ場所に重なってしまうことです。
たとえば、子どもが宿題を始める時間に、大人も仕事や家事でダイニングを使っていると、それだけで落ち着きにくくなります。
まずは「どの部屋があるか」ではなく、「家族がどの時間に何をしているか」を見直すほうが、今の住まいに合った整え方を考えやすくなります。
個室は“集中”、共用部は“見守りとつながり”で考える
個室は、視線や音を切り替えやすく、集中したい仕事や読書、オンラインでのやり取りなどに向いています。一方で、リビングやダイニングなどの共用部は、家族の気配があり、声をかけやすいのがよさです。小学生の宿題、タブレット学習、音読、翌日の持ち物準備などは、共用部のほうが進めやすいこともあります。
特に小学生低学年では、静かな個室よりも家族の気配がある場所のほうが安心して取り組みやすい場合があります。反対に、高学年になると、少しひとりで集中できる場所がほしくなることもあります。
個室が正解、共用部が正解と決めつけず、年齢や性格、やることに合わせて使い分けることが大切です。
宿題、音読、タブレット学習…内容ごとに場所をゆるやかに分ける
専用の書斎や勉強部屋がなくても、住まい方は十分に整えられます。たとえば、計算ドリルや漢字練習のように短時間で進めやすいものはダイニングで、音読やオンライン教材の視聴は少し落ち着ける場所で、学校から持ち帰ったプリントの確認や翌日の準備は収納の近くで、といったように、学習内容ごとに場所をゆるやかに分けるだけでも、毎日の流れはかなりスムーズになります。
兄弟姉妹がいる家庭では、同じ時間に全員が同じ場所で集中するのが難しいこともあります。そんなときは、「夕方はダイニングで宿題、あとから上の子だけ別の場所で仕上げる」など、時間帯で役割を分ける考え方も有効です。国土交通省は、住宅は適切な維持管理や更新によって長く使うことができ、その更新には設備交換だけでなく、間取りや意匠の変更も含まれると説明しています。
つまり住まいは、完成した形に合わせて暮らすだけでなく、暮らし方に合わせて使い方を整えていけるものです。
親にとって大事なのは、「学びの場」と「片づく仕組み」をつなげること
小学生のいるご家庭で散らかりやすいのは、仕事道具だけではありません。ランドセル、連絡帳、学校のプリント、水筒、体操着、タブレットや充電器など、毎日出し入れするものが多くあります。学習しやすい場所を考えるときは、机や椅子だけでなく、帰宅してから片づけ、宿題をして、翌日の準備をする流れまで一緒に考えるのがおすすめです。
たとえば、ランドセル置き場とプリント置き場が離れすぎていると、それだけで準備が面倒になりやすくなります。反対に、連絡帳、プリント、筆記用具、充電が必要な端末類などの定位置が近くにまとまっていると、子ども自身でも動きやすくなります。
見直しをラクにするのは、図面や記録の整理です
住まい方を見直していくと、「棚を足したい」「照明を変えたい」「将来は間仕切りを考えたい」といった話が出てきます。そんなときに役立つのが、図面や仕様書、過去の修繕・リフォームの記録です。
国土交通省によると、住宅履歴情報には、新築時の図面や建築確認書類、点検結果、修繕やリフォームの記録などが含まれます。これらは、今後の点検、不具合対応、リフォーム計画に活用できます。
コンセント位置、通信環境、建具の納まり、収納内部の仕様などは住宅ごとに異なるため、他の家の事例をそのまま当てはめず、自宅の記録を見ながら考えることが、ムリのない見直しにつながります。
“正解の部屋”を探すより、今の家族に合う使い方を更新していく
働き方も学び方も、この数年で大きく変わりました。だからこそ、住まいも一度決めた使い方をそのまま続けるのではなく、家族の成長や生活時間の変化に合わせて少しずつ見直していくことが大切です。
なお、戸建住宅でも、間取り、収納量、断熱性、コンセント位置、通信環境、建具や設備の仕様は住戸によって異なります。また、子どもに合う学習場所も、低学年では見守りやすさ、高学年では集中しやすさや自立しやすさなど、重視したい点が変わってきます。
大きく変える前に、まずは「どの場所で、何を、どの時間にするか」を家族で共有することから始めると、今の住まいでも整えやすくなります。
【3分チェックリスト】今週の“やること”まとめ
1. 平日1日の流れを書き出し、宿題・仕事・食事が重なる時間を確認する
2. 子どもが宿題をする場所と、大人が作業する場所をひとまず決める
3. ランドセル、プリント、連絡帳、充電器の置き場を1か所ずつ決める
4. 音読やタブレット学習をする場所の明るさと音の入り方を確認する
5. 兄弟姉妹がいる場合は、学習する時間帯を少しずらせないか考える
6. 図面、取扱説明書、修繕記録をまとめて保管場所を確認する
7. 「部屋を増やす」前に、「使い方を変える」余地があるか家族で話す
<引用元>
– 国土交通省 『住まいの考え方3 #1 住宅は若返る? 長く、快適に住まいを保つ』
– 国土交通省 『住宅履歴情報とは』
– 総務省 『テレワークの意義・効果』
次回予告
『秋の換気と採光を活かして、快適性と光熱費の両立を考える』
次回は、空気が入れ替えやすく、光も取り込みやすい秋の特性を活かしながら、住まいの快適さと光熱費のバランスを整える考え方をご紹介します。窓の開け方、日差しの取り込み方、無理のない空調の使い方など、これからの季節に向けた住まいの整え方をやさしく整理します。